遠い過去、忘れられた一日
2023年4月26日、社会の記憶から薄れていった事件、中華航空機事故の被害者について報道されました。
事故機に搭乗していた人のうち、およそ4割は海外の在住者であり、その中にはほとんど顧みられなかった人たちがいます。
その一人がフィリピン人のシラニー・ベトニオさん、彼女は家族を養うためにダンサーとして日本に出稼ぎに来て、事故で脊髄を損傷し、下半身不随になりました。
新たな生活、癒えない傷
事故から30年後、生存者や遺族とのつながりはないシラニーさんは小さな商店を始め、そこで出会った夫と結婚し、3人の子どもにも恵まれました。
しかし、治療を終えて以来一度も飛行機に乗ることはなく、ささやかな日常を守ろうとしてきました。
彼女は結婚や出産の快事を報告するたびに安堵する私たちに対して、その背後で事故による傷に苦しみ続けている現実を我々に思い知らせました。
私たちはシラニーさんを顧みながらも、その苦痛と向き合うことを避け、彼女が静かに抱えていた「心のキズ」を見つけることができませんでした。